醤油醸造の基本は大豆や小麦などの植物性原料をそれぞれ加熱処理してから勘合し、麹菌を繁殖させた後、食塩水を加え発酵・熟成させることで造って行きます。 その味わいは東洋独特の発酵調味料であると言われています。
美味い醤油を「造る」ために大切なこと、それは、
美味い醤油造りは良い「諸味(もろみ)」を造ること。
良い諸味を作るのは良い「麹(こうじ)」を造ること。
良い麹を作るのは熟練の「原料加工処理技術」。
原料加工処理とは本物の「良い原料」を吟味すること。
すべては醤油のためにお互いに関連しながら影響しあっている因果関係から成り立っています。
すべての条件を満たそうとすれば蔵人の技術と情熱がなによりも不可欠な最低条件といえます。
その情熱を表す表現として「麹は寝ても蔵人は寝るな」という言葉があるのです。
醤油の原料である大豆と小麦を加工して「種麹(たねこうじ)」とあわせて「麹(こうじ)」を作る過程では、きちんと麹の花を咲かせるための温度の管理のために蔵人は寝ずの番をします。
最新技術での大量生産の工場であれば温度計や湿度計などのセンサーをコンピュータで管理する方法が取られていますが、それだけでは解らないことというのが実は多いのです。
伝統の手法を守り続けるカネイワでは、蔵人が温度計を睨み、それだけでは足りずに、自分の手を入れて温度を確かめ、目で見て麹の状態を確認し、手にとって香りを確かめ、湿度を肌で感じ取る・・・と蔵人の五感全てを熟練のセンサーとして使うのです。
こうして、原料と種麹をあわせたものが麹に変わる過程を眠ることをせずに見つめ続けるのです。
蔵人が技術と情熱で「良い麹」を作り上げたら、良い諸味は自然の力が造ります。
カネイワ醤油本店の醤油を発酵熟成させる木桶や建物の中には、百年近くもの間、そこに世代交代をしながら住み着いている酵母や微生物がたくさん生きています。
この酵母と微生物、それを育む環境が、職人の技だけでは出しえない秘伝の味を今も守り続けているのです。
【麹菌】カビの中で、麹を作る際に用いられる菌が麹菌です。ニホンコウジカビおよび、ショウユコウジカビは、ともに醤油醸造に用いられている麹菌です。醤油の発酵にはこの麹のほかに乳酸菌も大きな役割を果たします。